福田 逸の備忘録―独断と偏見

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2007年 08月 17日

知人からのメール

 昨日(十五日)、夜遅く親しい友人からメールが届いた。どうらやNHKの(多分夜9時の?)ニュースを見て、悪酔いしたらしい。せっかくの酒がさぞかし不味かつただらう。以下、許可を得て抜粋掲載する。

今日のNHKニュース、腹が立つを通り越して悲しくなります。今日に限つたことではありませんが、「悲惨な戦争を・・」といつもの紋きり型、情けなくなります。遺族にすれば戦争にいい思い出がないのは当たり前だし、戦争が悲惨でないわけがない。その戦争に至る背景を振り返ったり触れたりなんてしようともせず、遺族の「悲しい」コメントだけをピックアップして、したり顔の女性アナウンサーに下らないコメントを喋らせる。今更のように反吐が出る思いでした。

挙句の果てに同じ顔して「また消費者の信頼が裏切られました」と、今度は白い恋人の賞味期限切れの改竄のニュース。まるでワイドショーじゃないですか。

それにしても、ミートホープだの菓子の期限の改竄、勿論、それ自体は許せんことかもしれないけれど、マスコミのあの粘着質の執念深いバッシング、何だか嫌らしくて仕方ない。不二家だののバッシングも、はたまた自民党の人事へのバッシングも、何だか日本人の自信喪失と自暴自棄、鬱屈した開き直りとでもいうのか、どこかで根っこがつながっている気がします。ヒステリーのように、失敗したものを叩くというか・・・。

おまけに原発のニュースの伝え方まで耳障りで、つい、言わずもがなの愚痴を書いてしまいました。久々のOFFに酒飲みながらニュース見たらろくなことが無い。

唯一、救いであったのは101歳の、戦争で息子を亡くした母親の言葉。「息子のことは(いつまでも話すと)人に悪いから、言わないでいる」というような言葉だったと思いますが、こういう謙虚さ、見習いたいものです。

 次はこれに対する私の返信からの抜粋。

仰るとおりです。
小生は八月といふと、不愉快で鬱陶しく憂鬱になるのです。なぜ、死者を(英霊のみではない)静かに悼み、各々の思ひを反芻する時に出来ないのでせうね。仰るとおり、以前参院選に関してブログで「暗い情念」と書いた、鬱屈した日本人が増えてゐます。まちがひなく、貴兄が仰るやうに自信喪失、敗北感からなのでせう。さういふ時は、個人でも、日本人総体としても、沈黙し軽々に行動しないことです。言葉も軽々しく発しないことです。

他人の非をあげつらふしかないマスコミの体質も、野党の体質も、それに対抗できない自民の体質も、全て自信喪失、自我の弱さから来てゐます。個人が生きることも、国を国として有らしめることも並大抵のことではない、しんどい事です。安倍さんには好意的であるが故に、いらいらします。頑張れよ、おいっ!と声を掛けたくなるのだけれど、今日のニュースでも、どこか憔悴してゐて声に張りが無い。一国の首相として情けない。たかだか参院選の敗北、と腹を括ればいいのに。私にも出来ないことだけれど、一国のリーダーつて、しんどくて、タフでなければ勤まらないのでせうね。そこは、小泉の唯我独尊は、ある意味見事だつた。

そも、戦争が良きことであるわけはなく、悲惨でないわけはなく、そんなこと分かりきつてゐる。でも戦争は起きてしまう。その現実を子供に教育できないなんて独立国ではない。大体、憲法で、九条で国が守れ、世界に平和が来るなら、そりや、結構! ベトナム戦争はもとより、湾岸戦争、イラク、イラン、アフガン、イスラエル、なんでもいい。拉致だつて同じ。あの憲法があつても九条があつても日本は何も出来なかつた、六十年もの間。憲法で(紙つぺら一枚で)ミサイル打ち落とせるなら、税金も安くて済むし、言ふ事ないですな。

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 以上、互ひに気楽なたわいの無いメールの遣り取りではあるが、それぞれ言ひたいことはお分かり頂けたと思ふ。

 たまたま、同じNHKが今日(十六日)京都五山の送り火を生中継で放送してゐた。かういふ時にも必ず戦争と結びつけるNHKが、私は朝日新聞と共に大嫌ひである。尤も今日のはNHKの完敗だつたが。

 ご覧になつた方も多からうが、お盆の送り火なのだから、京都の多くの市民が手を合はせ、近親の冥福を祈り御魂を送るのは当たり前。戦争で死んだ方であらうと、交通事故であらうと、はたまた自殺であらうと、近親の死者への思ひは千差万別であるとも言へ、また死に対する生者の思ひは一つ、とも言へる。

 そんな中で、NHKがクローズアップした一人の老女、九十を過ぎてゐたと思ふが、夫を戦争で無くしたといふ。生中継だが事前にインタビュー録画して流す特別扱ひ。ここまでで、私には先が読めてしまつた。経緯は以下の通り。会話は概略である事をお断りしておく。

 NHKのインタビュアーの声、「何か(ご主人の)思ひ出はありますか」。老女応へて曰く(ここです、NHKの完敗は)、「思ひ出? そんな思ひ出させるやうなこと、言はんで下さい。私の心の中に秘めてあるものだから……」。見事に一本取られてゐた。NHKは恐らく、戦争の悲惨に繋がるやうなコメントを老女から引き出したかつたのだらう。

 友人のメールの最後にある百一歳の母親と同じ心境を感じる。死者への思ひはその近親の心の中にあつてのみ、「思ひ」であり、尊く美しい。人の心にづかづか踏み込むものではない。

 そもそも、恥かしくないのだらうか、NHKに限らないが、レポーター達は自分のマンネリズムが。事故であれ、事件であれ、被害者に無神経にマイクを突きつけ、悲しみや辛さや涙や加害者糾弾を引き出さうとする。もしそれをよしとする視聴者がゐるなら、その方にも言ふ。あなた方は他人の不幸を餌食にして喜ぶサディストだ。自分より不幸な人間がゐることで満足するなら、下劣な根性の持ち主だ。どう控へめに言つても神経の鈍磨といふほかはない。新聞にせよテレビにせよ、もしも今でも天下の公器といふ自負がおありなら、先づは隗より始めよ。

 知人のメールにもあつたが、いはば、集団ヒステリーといふ言葉をキーワードとして持つてくると、この数年の日本の姿を浮き彫りに出来るのではないか。何かことが起こると、多くの人が一斉に同じスタンスで同じ方向を向く。泰然自若といつた姿はどこにもない。個々人による意見の違ひが冷静に語られない。違ひを違ひとして受け入れる度量も見受けられなくなりつつある。

 自信喪失、敗北感、デラシネ、日本人がそこに陥つたからとて、何の不思議もない。自国を自虐的に否定し、自分の(自国の)過去を否定し去つたら、人間に何が残る。我々には過去しか存在しない。歴史とは未来の話ではない、過去をどう描くかだ。自らが拠つて立つべき歴史を蔑ろにし、先人の足跡を侮蔑する、そんな民族に未来は無い(安倍首相はそこからの脱却を目指したのではなかつたか。「戦後レジームからの脱却」などと曖昧な事を言ふから、国民に真意が伝はらない。「美しい国」などと、ぼやけた事を言ふから印象もぼやける。参院選の敗北の原因は、年金だけにあるのではあるまい。ついでだから、言つておく。安倍のブレーンには、甘ちやん言論人が多すぎるのではないか)。

 小泉郵政選挙の熱狂、ホリエモンの熱狂、ホリエモン凋落時の叩き、今回の安倍叩き、ヒステリックに過ぎないか。私はこの傾向に全体主義への危険を、きな臭さを感じてゐる。右か左か、それは分からぬが。英雄と言ふより、片仮名でヒーローといつた方がぴつたりするかも知れぬが、日本人は心のどこかで独裁者を求め始めてゐはしないか。そして、何とはなしに不安を抱へた我が国には、今程、例へば北朝鮮の、支那の悪意ある挑発や指嗾に乗せられる危ふさすらもあるのではないか。
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by dokudankoji | 2007-08-17 01:02 | 雑感 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 本からの贈り物 at 2007-08-17 08:50
タイトル : 『ケストナー―ナチスに抵抗し続けた作家』 クラウス コルドン
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Commented at 2007-08-17 14:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 風来坊 at 2007-08-17 20:49 x
福田先生 こんばんは。
本当にNHKには、腹が立つを通り越して悲しくなることばかりです。
ご存知かと思いますが、数年前には、由紀さおり姉妹に、文部省唱歌「冬の空」を、次のように歌わせました。
  「囲炉裏のはたに縄なふ父は/過ぎ昔の思い出語る
  /居並ぶ子どもはねむさ忘れて/耳を傾けこぶしを握る」
「過ぎし昔の思い出語る」の部分は「過ぎし戦の手柄を語る」が元の歌詞です。
これでは、子どもが「こぶしを握る」意味がわかりません。
数ヶ月前のBS放送でも、全く同じように歌わせていました。彼女達もプロならば、NHKの指図を拒否する気概が欲しいものです。

先の参院選投票日の朝のニュースは、「渋谷区の松濤中学校では、投票に訪れた有権者が、選挙区選挙では候補者名を、比例区選挙では候補者名か政党名を書いて投票していました」と伝えていました。
一見、何の疑いもなく聞き入れてしまうところでしたが、「見てきたような嘘」で、講釈師も真っ青になりそうな報道でした。
Commented by おれんじ at 2007-08-18 00:11 x
福田先生、こんばんは。
私も最近とみにNHKや各局メディアの作為的な番組作りが目に付くようになったのですが、どうしてなのでしょうか。少し前までは軍隊経験といっても様々な体験談を聞く事が出来ました。やはり戦争を知らない者たちが番組を作るようになったからしょうか。
Commented by sesiria at 2007-08-19 18:57 x
大体もう「大東亜戦争」を「太平洋戦争」と言い換えているのが
不愉快だしおかしいんですがね。
どのマスコミも学校も世の中はほとんど「太平洋戦争」で統一されています。子供の頃父から「大東亜戦争」と聞いていてその呼び方の方が
なじんでいます。
テレビは洗脳装置だと認識し注意しながら見るか
あまり見ない方向へ持っていくかですね。
「戦後レジーム」などというのは全く心に響きません。
日本語でちゃんとその意味と何故変えなければならないか、変えたら
どうなるかを言葉を尽くして説明せなばなりませんね。


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