2005年 11月 30日
29日の朝日新聞朝刊に女系天皇に関するアンケートが載つた。71%が女系天皇支持といふ結果が出たさうだ。 だが、設問に疑問がある。設問、以下の通り。 ≪これまでは、父方に天皇の血を引く、いわゆる「男系」の天皇が続いてきました。もし、女性天皇の子供が天皇になるとしたら、歴史上初めて、母方だけに天皇の血を引く「女系」の天皇を認めることになります。あなたは、これまでの「男系」を維持する方がよいと思いますか。それとも、「女系」を認めてもよいと思いますか。≫ 一見、もつともらしい設問ではある。が、≪母方だけに天皇の血筋を引く「女系」の天皇を認める≫といふ表現で十分だらうか。国民の何割が、このことの本質を理解してゐるのか疑問だ。この文言では、天皇の血筋が母親を通して子孫に連綿と受け継がれるとも取れさうではないか。母方だらうが父方だらうが天皇の血筋を受け継いでゐるならよいではないかと、短絡的に考へてアンケートに解答した人々が相当数ゐるのではないか。おそらく、未だに男系と女系の違ひを認識してゐない国民がかなりゐるに違ひない。 仮に愛子様が即位なされ、民間人男性と結婚なさる。そのお子様は「母方だけに天皇の血を引く」ことにはなる。つまり、(実は余り染色体の論議をする気はないのだが)愛子様は二つのX染色体を有し、そのX1とX2の染色体の一つは雅子様から受け継いだもので、天皇の血筋ではない。仮にそれをX2として、そのX2が民間の男性の染色体と結びついて生まれるお子様は、雅子様の血筋と民間男性の血筋のみを受け継ぐことになる。つまり「天皇の血を引く」とは到底言へないのである。これでは天皇としての有難味がない。私にはそんな皇室を敬ふ気持ちもなければ、国家の元首としても認めたくもない。(ちなみに、現在でも天皇を自分の象徴などと思つたことはない。憲法が勝手にさう言つてゐるだけのこと、私はあくまで元首としての天皇を敬ふ。) かくも曖昧に、「母方だけ」にせよ「天皇の血筋を引く」といふ言ひ方で設問を済ませてよいのだらうか。とんでもない、アンケートの詐術といつてよからう。だから、私はアンケートといふものを信じない。我々は必ず、雑駁な設問に誘導されて、アンケートを実施した主体の期待通りの答へを導き出されてしまひかねない。従つて71%といふ数字も、頭から信ずる気にはなれない。 八木秀次氏がよくいふ神武天皇以来のY染色体なら、どこまで傍系にならうが、男系でつないでゐる限り同じ一つのY染色体を二千年以上に亘つて受け継いでゐるわけだ。 勿論私は染色体で議論するまでもなく、前にも書いた通り、伝統といふものは今までさうであつたといふだけで十分だと思つてゐる。まさに神話の時代から二千年を超える時を、一つの王朝が連綿と現代まで続いてゐることに日本人として誇りを持つてゐる。その事実に愛着を感じてゐる。それが偶々「男系」といふことであり、「万世一系」といふことであるだけだ。そこに男尊女卑もヘッタクレもない。男が尊いのでもなければ、女が蔑まれるべき存在だといふのでもない。ただ、この長い歴史を通してこの一王朝による皇室を我々の父祖が当然のこととして受け留め、受け渡して来たといふ事実だけで十分である。それが保守といふものであらう。 ところで、皇室典範が改悪され、女系天皇が生まれて皇統の断絶が起こつた時、我々には考へておくべきことが色々ある。今日は上記の観点から一点のみ挙げておく。 愛子様が御即位、民間男性との間のお子様がさらに即位なさつた時、当然ながら、その方は現在の皇統からは完全に絶縁した、つまり別の王朝が成立したと考へる人々が出てくる。(私もその一人だ。)その時、戦後に臣籍降下させられた旧宮家の男子の中から、自分こそは正統の天皇の血筋だと、その「万世一系」を主張する方が出て来て当然であらう。即ち、いはば現代版「南北朝」の出現であり、国論を二分することになりかねない。 その頃、私が生きてゐるはずもないが、仮に生き延びてゐたなら、男系の方を担いでクーデターを起こすかもしれない。そこまで物騒なことは言はぬにしても、第二の熊沢天皇問題になりはしないか。これは愚かなる杞憂で済むことだらうか。有識者会議、といふより、これを諮問した小泉首相はそこまで考へてゐるのだらうか。 どうも、小泉首相には、歴史認識・領土問題・拉致問題の放置、人権擁護法推進、A級戦犯犯罪人説、女系天皇推進と、全てにおいてことの本質や事実を知らぬとしか思へぬ言動が多すぎる。殊に女系天皇については、知つた上での言動だとしたら、これは確信犯といふことだ、朝日新聞の御用首相とでもいふ外あるまい。少なくとも保守主義から、最も隔たつた人物であることは否定できない。
by dokudankoji
| 2005-11-30 00:35
| 我が国
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七年前に更新を止めたブログ「福田逸の備忘録~独断と偏見」ーー装いも新たにタイトルを変更して再開します。これからは、残された日々の徒然を気の向くまま、心の赴くままに綴っていきます。更新は不定期です、悪しからず。(なお、「独断と偏見」時代の記事も取捨選択して、少しづつ見えるようにしてきます。) by dokudankoji カレンダー
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